その痛み、なぜ「何度でも」ぶり返すのか?前回の記事では、私たちが問診と独自のテストを通じて、あなたの腰痛の**「痛みを発している組織(真犯人)」**を正確に見つけ出すプロセスをご紹介しました。しかし、痛みの原因を特定し、その場で痛みが軽減しても、それで終わりではありません。
痛みが再び活動しないように、**「なぜ、その組織に負担がかかり続けたのか?」という痛みの「増悪因子(悪化させている原因)」を特定することが、根本的な改善、すなわち「痛みのぶり返しを防ぐ」**ために最も重要になります。
当院では、この**「機能評価」を行うことで、「どの機能を改善するのか?」という明確な“狙い”**を持って治療プランを立てていきます。今回は、あなたの腰痛を悪化させている3つの隠れた原因と、私たちがその原因をどう見つけ出しているのかを解説します。3つの「増悪因子」— あなたの腰痛を悪化させている隠れた原因筋・筋膜性の腰痛をぶり返させる主な原因は、以下の3つに集約されます。1. 緊張と滑走性の問題(固まりすぎ・動きすぎの問題)特定の筋肉や筋膜が**「硬くなりすぎている(過緊張)」、あるいは逆に「うまく使えていない(低緊張)」、そして筋肉同士の層が「スムーズに動けていない(滑走性低下)」**状態です。これは、腰の土台そのものが不安定になっている状態です。2. モーターコントロール不良(脳と体の連携ミス)簡単に言えば、**「体の使い方のクセ」**です。本来、腹筋を使うべき場面で、**無意識に腰の筋肉を使いすぎてしまう(過剰運動)**など、脳からの指令と体の動きが適切に連携できていない状態です。これが続くと、特定の筋肉だけが常に疲弊し、腰痛をぶり返します。3. オーバーユース(回復力の低下)**局所的または全身的な「回復・修復不良」**の状態です。疲労が蓄積し、微細な損傷が治りきらないうちに次の負担がかかるサイクルができてしまっている状態です。これは、日常生活の姿勢、作業内容、睡眠や休息の状態など、全身の状態が関与します。🎯 ステップ1:モーターコントロール不良の特定 — 「脳と体の連携ミス」を見つける多くの慢性腰痛で問題になるのが、この「モーターコントロール不良」です。当院では、この**「間違った体の使い方」**を特定するために、必ず以下の機能評価を行います。1. 腹筋運動中の背筋群の評価(腰の「無駄な力」を見つける)腹筋運動を行う際、腹筋が働くことで、背筋はリラックスすることが理想です。しかし、モーターコントロールが不良な方は、腹筋を使おうとすると、同時に背筋にも無駄な力が入ってしまうという「連携ミス」を起こしています。評価のポイント:患者様に「腰を床に押し付ける(骨盤を後傾させる)」動きを行ってもらいます。このとき、背筋が緊張していないか、腰が反ってしまう動きになっていないかを細かく触診してチェックします。改善への誘導:もし背筋が過剰に働いてしまう場合、私たちが手で骨盤の正しい動きを誘導し、患者様自身が**「この動きの時に背筋はリラックスしている」**という感覚を学習できるように促します。この練習を行った直後に、元の痛い動作(例:前屈)をしてもらい、痛みが著明に軽減すれば、**「背筋の使いすぎ」**があなたの腰痛を悪化させている主要な原因であったと特定できます。2. 上下肢抵抗テスト(全身の運動連鎖を見る)手や足を動かすという、日常的で自然な動作を行う際に、腰の筋肉が過度に収縮してしまうクセがないかをチェックします。評価のポイント:四つ這いや腹臥位(うつ伏せ)の状態で、手や足に抵抗をかけながら動かしてもらいます。本来、手足を動かす際は、腹筋群やお尻の筋肉(大殿筋)が働くべきですが、腰痛の方は背筋群が頑張りすぎてしまう傾向があります。改善への誘導:過剰に収縮してしまう背筋を緩めるコンディショニングを行い、代わりに腹筋やお尻の筋肉を意識的に使ってもらうように指導します。**「正しい筋肉の使い方」を学習した後、元の痛い動作での痛みが軽減すれば、この「動作のクセ」**が原因であると判断し、この動きを治療・ホームエクササイズに取り入れていきます。👂 ステップ2:オーバーユースの特定 — 日常生活の負担を探るオーバーユース(回復および修復不良)の問題は、問診からその手がかりを探ります。「何をしているときに痛みが出ますか?」「何をし終わった後に痛みますか?」この質問を深掘りすることで、長時間続くデスクワーク、特定のスポーツ動作、あるいは間違ったフォームでの作業など、局所的なオーバーユースの原因動作を見つけます。また、十分な休養が取れていない、睡眠不足が続いているといった全身の回復不良も重要な増悪因子です。もしオーバーユースの問題が強く疑われる場合は、一時的な安静や、原因となる動作や作業の時間短縮・方法の工夫など、生活習慣全体を見直すアドバイスも重要になります。✅ 「どこを治すのか?」そして「何を改善するのか?」前回の組織学的評価で「どこに問題があるか」を特定し、今回の機能評価で「なぜその問題が起きたのか」という増悪因子を特定します。**「痛みを発している組織」**の特定 \rightarrow 「どこを治すのか?」**「増悪因子」**の特定 \rightarrow 「何を改善するのか?」この二段階の精密な評価プロセスがあるからこそ、当院の施術は場当たり的な対処療法ではなく、あなたの体の根本的な機能を変え、痛みをぶり返しにくい体作りへとつながるのです。長引く腰痛にお悩みの方、痛みの真の原因を突き止め、根本的な改善を目指したい方は、ぜひ一度ご相談ください。ご予約・ご相談はこちらから[院の連絡先や予約フォームへのリンク]