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痛みの「真犯人」特定で終わりではない？
前回の記事で、私たちは腰痛の**「痛みを発している組織（真犯人）」**を特定する独自の評価方法についてご紹介しました。しかし、痛みのある組織を特定しても、その組織に**負担をかけ続けている「原因」**を取り除かなければ、痛みは必ずぶり返してしまいます。
そこで重要となるのが、**「機能評価」**です。これは、あなたの体の使い方、筋肉のコンディション、日常生活の負担といった、**痛みを悪化させている増悪因子（ぞうあくいんし）を特定し、「どの機能を改善すべきか」**という明確な治療の「狙い」を定めるための評価です。
今回は、特に重要となる3つの増悪因子と、私たちがどのようなテストでそれを見つけ出しているのかを詳しく解説します。
1. 筋のコンディション評価：硬すぎ？ 緩すぎ？ 動きはスムーズ？
あなたの腰痛の原因組織を特定したら、まずその周囲の筋肉や筋膜のコンディションをチェックします。
*️⃣ 過緊張・低緊張のチェック
筋肉や筋膜に触れる**「触診」**を通じて、以下の状態を確認します。
過緊張（硬くなりすぎ）：触ったときに硬く、押すと強い圧痛（痛み）を感じる部位。
低緊張（うまく使えていない）：力を入れたいのに硬さが感じられず、グニャっとしている部位。私たちは、解剖学的な位置関係を正確に理解した上で、**「押したときの患者様の痛みや違和感」**も同時に確認しながら、主観と客観の両面から評価します。
*️⃣ 筋・筋膜間の滑走性チェック
筋肉は層になって重なり合って動いています。これが**「滑走性」**です。過去の損傷や使いすぎにより、筋肉同士や筋膜同士が**癒着（くっつくこと）**を起こし、スムーズに動けなくなっている部分がないかを、筋肉を優しく「ずらす」操作で確認します。
2. モーターコントロール不良の評価：「腰の無駄遣い」を見つける
多くの慢性腰痛の原因は、このモーターコントロール不良、つまり**「無意識の体の使い方のクセ」**にあると私たちは考えています。本来使うべき筋肉（腹筋やインナーマッスルなど）がサボり、代わりに腰の筋肉が過剰に頑張ってしまうことで、痛みを発する組織に継続的な負担がかかります。私たちは、以下の2つのテストで、この「連携ミス」を浮き彫りにします。
① 腹筋運動中の背筋群の機能評価
この評価の目的は、腹筋を使うときに背筋が緩んでいるかを確認することです。
腰椎後弯（こしばねを丸める）運動：まず、腰を床に押し付けるように指示します。このとき、背筋に余計な力が入り、腰が丸まらずに反ってしまわないか（過剰に緊張していないか）を、施術者が腰に手を当てて確認します。
体幹の上げ下ろし：次に腹筋を使って頭部や骨盤を動かします。腹筋が働くときに、連動して背筋まで過剰に収縮していないかを評価します。
【改善へのアプローチ】
もし背筋が過剰に緊張する場合、患者様は**「正しい動かし方」を忘れている、または知らない状態です。私たちは、手で正しい動きを誘導しながら、「腹筋に力を入れたとき、背筋はリラックスしていいんだ」**という感覚を学習してもらいます。この正しい使い方を学んだ直後に、普段痛む動作（例：前屈）の痛みが半減以下になれば、この「使い方のクセ」こそが腰痛の主要な増悪因子であったと判断します。
② 上下肢抵抗テスト（手足の動きと腰の連動）
手足を動かすという単純な動作が、腰痛を引き起こす原因になっている場合があります。**四つ這いや腹臥位（うつ伏せ）**の状態で、手や足を上げる際に抵抗をかけます。
評価のポイント：手足を動かすとき、腰の筋肉が必要以上に強く働いてしまい、痛みを誘発していないかをチェックします。本来は、お尻の筋肉（大殿筋）や腹筋が主役となって動くべきです。このテストで背筋の過剰収縮が確認された場合、その場で腹筋や大殿筋を意識的に使う練習を行い、痛みの変化を確認します。この正しい感覚をホームエクササイズとして患者様自身に継続してもらうことで、動作の変容を図っていきます。
3. オーバーユースの評価：疲労と修復不良のサイクルを断ち切る
オーバーユースとは、疲労回復や微細な損傷の修復が追いついていない状態です。これは、問診で**「何を行っているときに痛みが出るか？」「何をし終わった後に痛むか？」**を注意深く聞くことで、原因となる動作や作業を見つけ出します。
疲労回復不良：モーターコントロールの改善により、一部の疲労は改善しますが、根本的な疲労が残っている場合は、一時的な安静や、作業時間の短縮・動作の工夫など、生活習慣への介入が必要になります。
微細損傷の修復不良：痛みのきっかけが明確な場合、損傷部位の状態を評価し、組織の修復を最優先とした治療が必要になります。
「何を改善するのか？」が明確な治療を
この「機能評価」を通じて、私たちは痛みの真犯人だけでなく、**あなたの体に染みついた「悪い使い方」や「回復力の低下」**という増悪因子まで特定します。「狙い」が明確だからこそ、当院の施術はマッサージや電気で終わらず、あなたの体が持つ本来の機能を取り戻し、痛みを再発させない体作りへとつながるのです。長引く腰痛の悪循環を断ち切りたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
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